旅だったチビ

 

チビが旅立った日というのは、あとから振り返ると、すごく不思議な1日でした。

まず、朝起きたときに、急に日本にいる家族に連絡を取ろうと思いました。

その日、送ったメールです。

  家族とのライン
 

 

文面を見て頂ければ分かりますが、状況が厳しくなっているとは思いつつ、まだ回復するかもと思っていました。

これは自分勝手に楽観的に考えているのではなく、獣医師さんの見立てでもそうでした。

実際、この数日前に行った血液検査でも、正常値近くまで戻っていて、これから良くなるかもという状況だったので。

 

チビの死を電話で知らせた時も、最初、獣医師さんは状況がわからなかったらしく、何度か聞きかえされました。

(日本人とフランス人が英語で会話しているので、単純に言葉の問題もあったかもしれませんが・・)

 

でも、なぜか、その日は、チビの顔を日本の家族に見せておこうという気になりました

午後、両親とスカイプをしたのですが、それが今年初めてでした。

後から振り返ってみると、顔を見せられて良かったと思います。

 

その時もチビはけっこう元気で、両親も安心していたのですが、夕方、急変しました。

呼吸が荒くなり、ちょっと苦しそうです。

 

ただ、これまでもこういったことが何度かあり、すぐおさまっていたので、普段だったら気にしないはずなのですが、この時は、どうしても、チビに目がいってしまいます。

仕事をしようとしても集中できないので、『今日はもう止めた!』と思い、チビのお腹をさすってあげることにしました。

 

『痛いの、痛いの、とんでけ~』といったかんじで、こうすれば、少しは楽になるかなと思って・・・

こんな考えが浮かぶことも、普通ならないのですが・・・

 

この時が17時過ぎ、私はこの後、チビが亡くなるまで、ずっとなで続けました

 

チビとの最後

私がなでていると、妻も心配になったのか、仕事をやめてチビのそばにきました。

そうすると、チビが寝転んでお腹をみせました。正確に言うと、お腹をみせようと、足を少し上げました。

 

その時は、力がなくて、足をあげることができなかったのですが、私にはチビがお腹をみせようとしていることがわかりました。

 お腹を見せるチビ
 

元気な頃のチビ。この時は『なでろ!』モード全開です。ただ、最後の日は、足をあげることができませんでした・・・

 

 

お腹をみせるのは、しっぽの付け根をなでろという合図なので、なでてあげたら、起き上がって四つん這いの姿勢になりました。

 

四つん這いだと苦しいだろうと思い、ソファの上にチビが好きな毛布を敷いて、そのうえに寝かせてあげることにしたのですが、抱きかかえた時、チビの首がダラッとしていて、意識が朦朧としていることがわかりました。

 

妻は病院に連れていこうか悩んでいたのですが、私のなかでは、来るべきものが来たと思い、このまま家で最後を迎えることにしました。

その時が、18時過ぎ。

夕方の散歩の時間です。

 

コロスケが外に行きたくて、ソワソワしています。

私も妻もチビのことが気がかりですが、まだしばらくはもつだろうから、今のうちにコロスケを散歩に連れていって、夜、二人でチビを看取ろうという話になり、妻が散歩に連れ出しました。

 

二人きりの時間

妻とコロスケが外に出て、家のなかは私とチビだけになりましたが、その瞬間、空気が変わりました。

おごそかで厳粛なんだけど、どこか心地よい感じです

 

そこでふと気づいたことがあります。

 

チビは私が独身の時に飼い始めた犬です。

 

その3年後結婚して、ほぼ同時期にコロスケを迎い入れて、それからは一家4人の生活です。どこに行くにも4人で行動していました。

 

私とチビが二人きりになったのは、結婚してから初めてでした。

それで、妙な懐かしさもあり、『オマエがウチに来たときも、こうだったよな』と、チビとの二人だけの時間を思いきりかみしめました。

 

チビは私にとっては、ともに人生を闘った相棒といった存在で特別です。

それはチビにとっても一緒で、私は別格の存在です。

 

ウチの両親や義父母、親戚、友達からも、『チビはパパだよね』と、よく言われていました。

 

それで、妻いわく、

『最後の最後は二人きりで過ごしたかっただよ』

 

今は、私もそう思っています。

話を戻すと、妻とコロスケが散歩に出て30分後ぐらいに、チビの呼吸がすごくゆっくりになり、そして止まりました。

本当に眠りに落ちたかのような最後でした。

 

お通夜ができました

妻が散歩から帰ってきたのは19時過ぎ。

しばらくチビに寄り添った後、お通夜を始めました。

 

お通夜といっても、ビールを飲みながら語るだけです。

でも、その日は、お酒の力を借りることで、チビを失ったという衝撃を、だいぶ和らげることができて、そのおかげで睡眠を取ることができました。

 

次の日から号泣することになるのですが、この日の夜、妻と語ったことで、精神的にだいぶ楽になったと思います。

もし、チビが旅立ったのが昼間だったら、夜まで妙に時間が空いて、寂しさが募ったかもしれないし、かといって、夜中や明け方だったら、次の日に響いていたと思います。

 

変な話なのですが、19時過ぎというのは、私達夫婦の心、体を休める最も最適なタイミングで、チビはここまで配慮してくれたのかなと思ってしまいます。

ホントに飼い主想いのできた子です。

 

この日の夜は、結局、酔い潰れることになるのですが、私はこんなことをチビに話かけながら、寝落ちしました。

 

 

寂しいよ、チビ

でも、温かい気持ちも感じる

チビはこれからも俺と一緒

一生忘れないよ

俺の最高の宝物
オマエは最高の犬だった